ユーモアの力
「笑う門には福来たる(笑門来福)」ということわざがあります。「いつもニコニコしていて笑いが満ち溢れている人の家には自然と福運がやってくる」つまり、「笑う」ことの中には希望がある、ということなのでしょう。
ユーモアにもいろいろな種類のユーモアがあり、「お笑い」などもその一つですが、できればだれかを攻撃するような笑いよりも、大喜利のような言葉遊びや人を楽しませたり支えるためのユーモアのほうが心が豊かになり、対人関係も良好になるように思われます。
認知行動療法では、特にネガティブな思考(認知)が浮かび続けたり反芻したときに、それに気づいて客観視(外在化)するために、それら思考に「名前を付ける」というやり方を取り入れることがあります。なるべくばかばかしいネーミングをつけることで、ちょっと「くすっと」笑って横においておけたり、その思考と距離をとれるようになることで、自分の心を支える側面を持つ、と考えられています。「まあ、そんな日もあるさ」「そんなことも人生あるよね」と思える気持ちが出てくると、抑うつ感を低減できたり、つらい状況でも自分を見失うことなくそのままその気持ちを持ち続けたり、乗り越える力にもなるのでしょう。
木曜午前のPG「当事者研究」の理念の中にも「笑う力・ユーモアの大切さ」というものがあります。当事者研究の場には、不思議と笑いとユーモアが溢れています。「ユーモアとは、にもかかわらず笑うこと」といわれているように、「ユーモアは苦しい現実から適度に距離を取り、苦労に打ちひしがれないために人間に備えられた力であり、究極の生きる勇気だともいえます」(当事者研究の理念より抜粋)。参加者の皆さんが提案される「新しい自分の助け方」の中には、ユーモアにあふれたアイデアがたくさん含まれています。自分のこれまでの助け方とはちょっと違った「別の方法」を試してみる良いきっかけにもつながります。興味のある方はぜひ参加をお待ちしています。
このように、笑うことがもたらす「希望」は、心理的にもとても大きな力があり、慢性疼痛や免疫力の活性にもつながるとも言われています。面白いことがなくても「とりあえず笑ってみる」つまり、ジェームズ・ランゲ説でいうところの「悲しいから泣く」ではなく「泣くから悲しい」の笑いバージョンですね。まずは笑ってみることで、心の持ちようが変化してくる体験をしてみるのもありなのではないでしょうか。
今年もあと少しですが、皆様が笑顔で新しい年が迎えられますように。
O.M





