阳春三月
厳しい冬を乗り越え、柔らかな日差しが大地を照らすこの言葉を聞くだけで、私たちの心には温かな風が吹き抜けるようです。この言葉のルーツは、紀元前、中国前漢の武帝の時代に編纂された思想書『淮南子(えなんじ)』に遡ると言われています。
単に「気温が上がり、天気が良い」という気象現象を指すだけでなく、そこには万物が冬の眠りから覚め、力強く動き出すエネルギーが込められています。
もともと「春」という漢字には、草木の種が発芽するという意味が含まれています。心理学的な視点で見れば、春は「再生」と「リビドー(生命エネルギー)」の解放の象徴です。
冬の間、私たちは寒さから身を守るために、エネルギーを内側に閉じ込め、保守的な心理状態になりがちです。しかし、三月の陽光を浴びると、脳内では幸福感をもたらすセロトニンの分泌が活発になり、私たちの心は自然と「外」へと向かい始めます。新しいことを始めたくなる、誰かに会いたくなる。そんな浮き足立つような感覚は、生物としての本能的な喜びなのです。
「春といえば何を思い浮かべますか?」と問われたとき、私の頭に真っ先に浮かぶのは、春風に吹かれて空高く舞う「凧」の姿です。
子供の頃、宿題として慣れない手つきで竹ひごを組み、紙を貼り、自分だけの凧を作った思い出があります。今の私から見れば、当時の自分の工作技術は拙いものだったでしょう。しかし、あの時、自分の走る速度に合わせてグングンと高度を上げていく凧を見上げた時の高揚感は、今でも鮮明に覚えています。
皆さんは、春といえば何を思い浮かべますか?
SEN





